ローラ・ニーロ、1971年5月、フィルモア・イーストでのライヴ。一部以外、未発表だった音源が2004年にCD化されたもの。日本国内盤には飛翔というタイトルがついている。
当時ローラは23歳、彼女のライヴ盤はいくつかあるが、初期のものはおそらくこれが唯一で、とくに僕のようなアルバム Gonna Take a Miracle のファンにとっては、その制作と同時期のライヴとして特別なもの。実際、Gonna Take a Miracle と共通した空気感を漂わせつつ、しかし同時にこちらはピアノ一台の弾き語りとして、音楽家としてのまた違ったローラの顔をみることができるアルバムになっている。
- American Dove
- Medley: Ain't Nothing Like The Real Thing / (You Make Me Feel Like) A Natural Woman
- Spanish Harlem
- I Am The Blues
- Medley: Walk On By / Dancing In The Street
- Emmie
- Map To The Treasure
- Christmas In My Soul
- Save The Country
- Medley: Timer / O-o-h Child / Up On The Roof
- Medley: Lu / Flim Flam Man
- Mother Earth
ローラのピアノと歌だけで、本当に最後まで飽きずに聞いていられる。ピアノにしたって、けっして流麗というわけではなく、ゴスペル調の張りつめたタッチだからそうは感じないだけで、テクニックだけで言えば朴訥ですらあるのだが。ミラクル。
この1971年という年は凄い年で、おもいつくまま挙げても、
- 2月、キャロル・キングが Tapestry を発表
- 5月、マーヴィン・ゲイが What's Going on を発表
- 8月と10月、ダニー・ハサウェイが 翌年Live として発表するライヴを録音
- 11月 スライ&ザ・ファミリー・ストーンが There's a Riot Goin' on を発表
なんて具合で、アメリカン・ミュージックのひとつの頂点と言いたくなる。ローラのこのライヴの選曲をみてほしい、彼女の(それからキャロル・キングの)音楽のボーダー・レスぶりはまたどこかで改めて書こうとおもうが、彼女の音楽そのものがアメリカ文化のひとつの体現である。
ここからどれか一曲選ぶというような種類のアルバムではないが、どちらも聞きどころである、ベン・E・キングがヒットさせた(3)と、ローラ自身の曲(7)で、どちらでもスパニッシュ・ハーレムというフレーズがくり返されているのが耳に残る。スパニッシュ・ハーレムとは、マンハッタンのイースト・ハーレムの一部で、かつてはイタリア系が多かったらしいが、次第にプエルトリコ系の住民が増えて、ヒスパニック系住民の居住地になったらしい(スパニッシュ・ハーレム - Wikipedia)。ローラの原風景というべき場所なのだろうか。
ローラが育った時代とはちがうが、このワードでうろついているときにいいページがヒットしたので、リンクを張っておきます。
Spanish Harlem in the 1980s – in pictures | Art and design | The Guardian
https://rateyourmusic.com/artist/laura-nyro