ふつうの人はCDなんてもう買わなくなった

How unfashionable to buy music CDs nowaday

Leon Thomas / Spirits Known and Unknown

フライング・ダッチマンの再発1080円だよシリーズから、レオン・トーマス、彼の最初のソロ・アルバム『スピリッツ・ノウン・アンド・アンノウン』、1969年発表作。

英語のウィキペディアを眺めてみると、イリノイ出身で1937年生まれ、カウント・ベイシーのバンドに参加していた時期があるとは意外な。彼独特のヨーデル風歌唱法が影響を与えたアーティストに、ティム・バックリーやボビー・マクファーリンの名前が挙がっている。

  1. The Creator Has A Master Plan (Peace) 
  2. One
  3. Echoes
  4. Song For My Father
  5. Damn Nam (Ain't Goin' To Vietnam) 
  6. Malcolm's Gone
  7. Let The Rain Fall On Me
  8. A Night in Tunisia
  9. Damn Nam (Ain't Goin' To Vietnam)
  10. Um Um Um

1969年といえば、ボブ・シールファラオ・サンダース(本当はフェアロー、と読むらしいが)の『カーマ』をプロデュースしたあとに、インパルスを辞めてフライング・ダッチマンを設立したタイミング。そのフライング・ダッチマンから、『カーマ』を受けてつくられたのがこのアルバム。「リトル・ロック」なる変名を使ったファラオ・サンダースや、もちろんロニー・リストン・スミスなんかも参加して、一曲目で(1)「クリエイター・ハズ・ア・マスタープラン」を再演しているように、まさに『カーマ』のスピン・オフ作品といった趣。(5)ではベトナム戦争への反対を、(6)ではマルコムXの死をうたって、当時のブラック・ミュージックらしくメッセージ性も強い。

曲としてとくに美しく感じるのは、レオン作の(3)や、ホレス・シルバー作のスタンダード(4)。ヒョロヒョロと鋭く響くのは、ジェームズ・スポウルディングのフルートなんだろうか?レオンのヨーデル唱法と響きあう。(4)2:45でキンキン金属片が打ち鳴らされて、いろいろなパーカッションが続くけど、いわゆるスピリチュアル・ジャズのこういう瞬間が好き。いかにも「実験音楽してますよ~」という感じで鳴らすのではなくて、一番フィーリングにしっくりくる音を選んだだけだ、という風情が。

(8)から(10)は、今回2018年の再発盤のボーナス・トラックで、どれもおもしろい。とくに(8)「チュニジアの夜」のライブ演奏、あまた存在するこの曲の演奏の中でも、出色の迫力。熱い、熱い。レオンの歌唱もほとんど怪演の域に達して、シリアスな芸風のスクリーミング・ジェイ・ホーキンス、なんつったら怒られちゃうだろうか。

かとおもえば、(7)の静かな、思いがけずメロウなジャズもよくて、きっとこの曲でアルバムを聞き終えるのも最高だろうなと、ボーナス・トラックの有無をめぐってあれこれおもう、電子配信のなかった世界。

 

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