ザ、じゃない、ジ・オージェイズのデビュー・アルバム。で、激安CD20枚セット、フィラデルフィア・インターナショナル・レコーズ「ザ・コレクション」の第二弾。オージェイズは1972年時点ですでにかなりのキャリアや変遷を経ているらしいが、このときのメンバーは Eddie Levert、William Powell、Walter Williamsの三人とな。
- When The World's At Peace
- Back Stabbers
- Who Am I
- (They Call Me) Mr. Lucky
- Time To Get Down ★
- 992 Arguments ★
- Listen To The Clock On The Wall
- Shiftless, Shady, Jealous Kind Of People
- Sunshine
- Love Train ★
一曲目は正直、この時代よくあるスライ&ファミリーストーンの後追い・劣化版ですよ。アナログ・レコード時代の一曲目って本当に大事だったわけで、デビュー当時のそろりと入った感じがよく分かる。それが二曲目になると、後世には押しも押されぬスタンダートとなる、フィリー・ソウルの幕開け。
ディスコ・サウンドを退屈とみる風潮ってあって、半分はそれももっともな意見かなと思う。だけど、陳腐なディスコ・サウンドにみえて、ひと味ちがう、ひと味ちがうことでぜんぜんちがう、って種類の音楽があると、ここは強く主張したい。Philadelphia International は、そういう音楽を数多く生み出したレーベル。もうひとつ頭にあるのは、ドナルド・バードだとかの、LA時代のBlue Note。確かにちがうんだよ。このアルバムといえば、ディスコ前夜における未完成な部分と、このときだけの瑞々しい部分とが同居している。スマッシュ・ヒットとなった 2曲目"Back Stabbers"もいいけど、5曲目"Time To Get Down"の、予感に満ちた音を聞いてみてよ。
いや、B面1曲目にあたる、CDの6曲目"992 Arguments" も、導入から最高だな。ロマンティックで前のめりで。
そしてトリは、ディスコ・サウンドの創始ともされる、"Love Train"。偉大なパイオニアがしばしば、偉大であればあるだけそうであるように、散々そのスタイルを真似されコスられて、そのあとの現在に聞くとサウンドは平凡だ。しかし、出発点に立った者が感じる、ここから視界が拓けていく、ここから始まるんだという感覚は、むしろ純度を増して響きさえする。