アルバムを20枚収録した Cal Tjader, Milestones of a Legend というCDセットから4枚目、Dave Brubeck Trio with Tjader, 1949年と1950年に録音とな。カル、修業時代の録音。これはカルのリーダー作ではないけど、小編成のバンドでデイヴ・ブルーベックに挑む(?)彼の演奏が楽しめる盤で、セットに収録されていて嬉しい。
またこのアルバムは、デイヴ・ブルーベックにとってもリーダー作として最初期の一枚なんだね。ときにデイヴが29歳、カルが24歳。そう思って聴くと、すでにデイヴが個性全開のプレイをしているというのは凄いなあ。
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カルの伝記を書いたダンカン・リードさんによると、カルは最初ドラマーとしてデイヴのバンドに加わり、ボンゴなんかはその後で覚えたのだとか。まさに1949年頃のこと、デイヴの回想、「ある日、カルがヴィブラフォンを持ってきてもいいかいと尋ねてきたんだ。僕は、“君がヴァイブを弾くだなんて、知らなかったよ” と答えた。そうしたらカルは、”うん、始めたばかりでうまくは弾けないんだが” と言うんだ。ところが彼が最初にヴァイブを演奏したとき、それはまるで、生まれてからずっと弾いてきたってみたいだった」。
そして、キューバ人のパーカッショニスト、アルマンド・ペラーサと出会ったことが、カルがラテン音楽に傾倒するきっかけとなったという。ふたたびデイブの回想、「ある夜、クラブのオーナーが “アルマンドって奴は本当にボンゴとコンガを叩けるんだよ。ちょっと叩かせてみないかい?” というんだ。[当時、25歳だったアルマンドは、ちょうどスリム・ゲイラートのバンドを首になったばかりだった。] 僕は “いいよ”と言ったんだ。アルマンドはクラブの空気を変えたよ。それがカルがキューバ音楽に出会った最初だったんだ。それから彼はボンゴを買って、アルマンドからいろいろ教わったのさ。すぐさまにだったよ、カルは本当にラテン・サウンドに興味を持つようになった。僕の知るなかで、カルはもっとも天性をもったミュージシャンのひとりだったね」。
(Duncan Reid, Cal Tjader was one of the first jazz musicians to embrace Latin music)
・・・・・・ということは、このアルバムのカルはヴァイブもそうだし、ボンゴなんかはもうほんとに買いたて、習いたてなわけだ。
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- You Stepped Out Of A Dream
- Lullaby In Rhythm
- Singin' In The Rain
- I'll Remember April
- Body And Soul
- Let's Fall In Love
- Laura
- Indiana
- Blue Moon
- Tea For Two
- Undecided
- That Old Black Magic
カルはドラムを叩いているだけだけど、(3)、なんて楽しいピアノだろう。と、思って曲名をみたら、はあ、「雨に唄えば」じゃないの。曲名にも気づかないくらい、新鮮な一曲。
(5)、スタンダードをデイヴが変拍子ピアノで奏でるところに、若さを感じるカルの熱いボンゴが絡む、実験的な印象の残る一曲。
(8)など完全にピアノの曲で、いいピアノなんだけど、デイヴのファンは、カルが叩くドラムに不満だろうねこれは。カルのファンといえば、ドラムじゃしょうがないよねと、ただ微笑む。ボンゴとしての善し悪しはよく分からないけど、ドラムよりボンゴの(12)のがいいよね。
全体として、クール・ジャズとしては荒削りなデコボコがあるのだけど、ふしぎな魅力のあるアルバム。このCDセットで、Mambo with Tjader と 2 in1 になっているところは違和感ありありだけども、そこは別々に聴こう。