オージェイズ、1973年のアルバム。CD20枚セット、フィラデルフィア・インターナショナル・レコーズ「ザ・コレクション」では6枚目。
いよいよ快調、快進撃。ギシギシとマストが軋むSEからはじまるタイトル曲のShip Ahoyとは船乗りのかけ声で、奴隷船を意味しているとか、抑圧や不遇の中から20世紀最高の芸術が生まれるところにブラック・ミュージックの不思議があるが、PIRの仕事も、エンターテインメントとプロテストの気高き融合を実現している。
- "Put Your Hands Together"
- "Ship Ahoy"
- "This Air I Breathe"
- "You Got Your Hooks in Me"
- "For the Love of Money"
- "Now That We Found Love"
- "Don't Call Me Brother" ★
- "People Keep Tellin' Me"
- "Put Your Hands Together (live)" (CD Bonus)
なるほど、5曲目はそれで有名らしいが、アンソニー・ジャクソンの太いベースが強烈だ。とてもコーラス・グループの曲ではない。アルバム全体のアレンジはノーマン・ハリス、あとはギャンブル&ハフがプロデュースだが、大胆な強弱がフィリー・ソウルらしさを作っているのだな。ぶ厚さとロマンティックさ、震えるバリトンというちょっと変わったヴォーカルもフューチャーした7曲目、なかなかよい。
こうやって改めてPIRの代表作を聴きなおしてみると、ファンクな初期ディスコという以上に、音的にはかなりAOR(AC)寄りだったりして、今聞くと柔らかすぎるくらい。この時代にだから放ちうる精彩をしか放っていないが、それだけで十分なくらいの精彩がみなぎっているんだ、とくにこのアルバムといえば。